編集者注:この記事はironSourceのチーフデザインオフィサー(CDO)であるDanGreenbergがLevelUp 2021で行った貴重なプレゼンテーションに基づいています。LevelUp 2021の動画は以下からご覧ください。
ここ3年間で、モバイルにおけるユーザー獲得のためのクリエイティブ最適化という分野は、エンゲージメントとスケールという両面で、ほぼ「ユートピア」のような状態へと急速に近づいてきました。平均のIPM は7倍増加し、eCPIは低下し、自動化と機械学習などのツールのおかげで、かつてないほど簡単に関連性の高いユーザーへ効果的かつ効率的にリーチできるようになりました。
依然としてクリエイティブがゲームの成否を分けることに変わりはありませんが、iOS14のプライバシーアップデートによって従来のモバイル業界の情勢が変化しようとしています。そしていま、この新たな常識がどのようなものであるかを理解し、クリエイティブ戦略を適応させていくことが求められています。
まず、iOS14アップデートによってどのような変更があったかを確認することが重要です。
- 1つのチャンネルあたりのキャンペーン数に制限が設けられたため、同時にローンチおよびテストができるクリエイティブの数も制限されます。
- データ制限によって、ユーザー行動の定量化とクリエイティブごとにインストール後イベントを元付けるのがより困難になります。
- コンバージョンバリューがクリエイティブのテストサイクルの速度を落とします。クリエイティブを毎日ローテーションさせる代わりに、何らかの変更を加える前にコンバージョンバリューに達するのを待つ必要があります。
こういった新たな制限の組み合わせによって適応的なアプローチが必要になります。iOS14以前の世界と同じようにスケールとエンゲージメントを推進できるクリエイティブを構築するには、iOS14の新たなプライバシーフレームワークの中でどのような取り組みをすることができるでしょう?ここではゲームのパフォーマンスをブーストして成長し続けるために戦略を適応させるためのヒントをご紹介します。
1.パフォーマンスを追跡するための広告内アナリティクスに慣れる
iOS14のプライバシーアップデートはインストール後のユーザー追跡を制限するかもしれませんが、それでも広告内データを見ればクリエイティブがユーザーのエンゲージメントとスケールをどのように推進しているかを理解できます。
インタラクティブ広告により、クリエイティブのパフォーマンスとユーザー動向に関するすべてを可視化して有益な広告内アナリティクスを得ることができます。ユーザーのエンゲージメントに関しては本質的にブラックボックスである従来のクリエイティブとは異なり、インタラクティブ広告ではエンゲージメントレートや、ユーザーのアクション、そして離脱率といったデータにアクセスできるので、パフォーマンス最適化のために調整しなければならないことを正確に理解できます。
こういったデータポイントと設定ベンチマークを利用したり、属しているジャンルのベンチマークを参考にしたりすれば、パフォーマンスを改善しようとする際にクリエイティブの調整と最適化に役立ちます。例えば、SupersonicのMad Dogsでは、チュートリアル画面を変更することによって エンゲージメントレート が69%から77%に上昇しています。つまり、広告を通じてプレイすることを選択したユーザーの数が11.5%増加したということです。
キャンペーン側からコンバージョンレートを見ることはより困難ですが、広告内データからはエンゲージメントを獲得している広告とそうでないものの特徴と内容を検証することができます。
2.Android上でテストに挑戦する
iOSのプライバシーアップデートによって、様々なクリエイティブのセットをテストする際に高い透明性のある包括的なデータを取得することがより困難になりました。そのため、Androidが最適化の環境として注目されています。これまでにironSourceで検証してきた結果、ほぼすべてのクリエイティブでiOSでパフォーマンスが優れていた広告とAndroidで上手くいった広告との間に高い相関性があることが分かっています。
まず、Androideでパフォーマンス改善とデータ収集を行い、そこで学んだことをiOSのキャンペーンで応用することができます。既にいくつかの広告主がこの方法を採用しています。キャンペーンのテストと最適化におけるAndroidの価値が認識されはじめるとともに、Androidにおける広告収益、CPIやローンチタイトル数などのすべてが伸びています。実際、USにおいては、初めてAndroidのeCPM がiOSを上回りました。
3.より幅広いオーディエンスにリーチできる多層コンセプト
iOSの新たなプライバシーフレームワークにおけるユーザープライバシーと制限によって、意図的に特定のオーディエンスをターゲットすることがほぼ不可能になりました。ですが、1つのクリエイティブで複数の異なるコンセプトを組み合わせ、訴求できるオーディエンスの規模を広げることで、この課題を克服することができます。つまり、多様な興味を持つユーザーにリーチし、スケール拡大機会を最大化することができるのです。
当社では、この多面的クリエイティブのことを「IPMケーキ」と呼んでいます。様々なタイプのユーザーに響く各コンセプトを1つのクリエイティブの中で、ケーキのように多層的に重ねて広告を構築することから、そう呼ばれています。このアプローチは、より幅広いユーザーベースとのエンゲージメントやIPMのブーストによるスケール拡大に役立ちます。
一例として、住宅リフォームをテーマとして人生を再構築しようとしている女性を主人公にしたストーリーのワードパズルゲームのためのクリエイティブを考えてみましょう。この1つのコンセプトの中でワードゲームと、シミュレーション、そして好奇心をそそる物語を組み合わせていることになります。そして、こういったすべてのコンセプトを1つのクリエイティブの中で強調する場合、アピールしようとしているすべてのユーザーを対象とした以下のような層を持ったケーキとして考えることができます:
- 1つ目の層は、ストーリー主体のゲームを好むユーザーにアピールします
- 2つ目の層は、シミュレーションが好きなプレーヤーを引き付けます
- 3つ目の層は、ワードゲームのユーザーの注目を集めます
- 4つ目の層は、ストーリーの奇抜な捻りに引かれるユーザーのためのものです
クリエイティブでストーリーのすべてを伝えることを恐れる必要はありません。どんなジャンルであっても、より幅広いユーザーベースにアピールできる多層的なクリエイティブをデザインすればグロースを得ることができるのです。
新たな世界に適応する
iOS14のプライバシーアップデートはモバイル業界におけるより大規模な変化の一部です。このような大きな変化やCOVID-19などの出来事から大きな影響を受けてきました。ですが、クリエイティブがゲームビジネスの成否を左右するということだけは変わっていません。ですから、この転換期におけるアドバイスは以下のようになります。
- 広告内アナリティクスとインタラクティブなフォーマットを利用しましょう
- 可能な限りAndroidにおけるクリエイティブテストを活用しましょう
- 「IPMケーキ」モデルに従って幅広くアピールできるクリエイティブをテストしましょう
こういったヒントを参考にすれば、iOS14の新たなプライバシーフレームワークによってトラッキングが制限されたとしても、真のユーザーインテントの要因を判断することができます。